「逃げなさい」
とても斬新な帯のキャッチコピーの「特に深刻な事情があるわけではないけれど私にはどうしても逃避が必要なのです」。
著者、山口路子氏の「絶望しやすい人」への逃避の名言集です。
三島由紀夫や岡本太郎、ドストエフスキー、ピカソなどの名言、作品の一部を切り抜き、彼女なりの解釈で様々な名言を書き綴っていて、繊細な方に読んでもらいたい一冊です。
しっかり読むと1時間程、パカっとページを開いたとこから読んだりもできますよ。
主な名言
ここからは私が心に刺さった名言を章ごとに一つずつ紹介していきます。
第一章「前向きに生きる」から逃げたい
決して勝たないけれど、戦い続けていれば、負けないのです。
然し、生きていると、疲れるね。かく言う私も、無に帰そうと思う時が、あるですよ。
戦い抜く、言うは易く、疲れるね。
然し、度胸は、決めている。是が非でも、生きる時間を、生き抜くよ。
そして、戦うよ。決して、負けぬ。負けぬとは、戦う、ということです。(略)
決して、勝てないのです。人間は、決して、勝ちません、ただ、負けないのだ。
坂口安吾『不良少年とキリスト』より
第二章「人付き合い」から逃げたい
つまらないことをし続けると、頭が麻痺します。
嘘とはつまりこんなことだ。
いやなことでも「はい」とすなおに言ったり、笑いたくない時でも笑ったり、つまらないことでも一生懸命やって、更に一生懸命やり続けることで自分の頭を麻痺させてしまうようなことである。
大庭みな子『啼く鳥の』
第三章「家庭」から逃げたい
家庭からの逃げ場がないと、家庭を守ることはできません。
家庭を出ずして、家庭を守れない。
映画『家庭』
第四章「仕事」から逃げたい
明日できる仕事、他人ができる仕事はしなくても良いのです。
明日できる仕事を今日するな。
他人ができる仕事を自分がするな。
ひろさちや『狂いのすずめ』
第五章「世間」から逃げたい
多くの人に好まれるものは、ろくでもないものなのです。
お前の行動と作品が、万人に愛されることがかなわないのなら、少数の人間を満足させよ。
多くの人間に愛されるものは、ろくでもないものなのだ。
シラー
第六章「日常」から逃げたい
中身がからっぽにな人になるのが嫌なら、日常から離れてみなければなりません。
時がマストの上ではためく。
そこで、私たちは立ち止まり、そこにしばらくたっている。
かたくなに、習慣の輪郭だけが人間のからだを支えている。
中身はからっぽなのに。
ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』
第七章「良識」から逃げたい
常識を疑わなくなったら人間おしまいなのです。
常識的に悪いとされていることは本当に悪いことなのかどうか。
いわゆる「いいこと」とされていることは本当にいいことなのかどうか。
もしかするとその悪いことは非常にいいことかもしれないじゃないか。
誤解を恐れずにいえば、人殺しも含めてです。
筒井康隆『断筆宣言への軌跡』
第八章「孤独」から逃げたい
泣きながら目を覚ます朝を何度もむかえているなんて悲しすぎます。
今朝は泣きながら目を覚ました。
六十近くになって、人は自分を大きく変えることができるのだろうか。
メイ・サートン『独り居の日記』
第九章「貞操」から逃げたい
「魂の問題がない女」は貞操感のない女より罪深いのです。
諸君は罪を知っているか。罪とはなんぞや。
貞操を失う女は魂の純潔も失う、と、然り。
家庭に安住する貞淑にして損得の鬼の如き悪逆全良なる奥方を見よ。
魂の純潔などはない。魂の問題がないのである。
坂口安吾『エゴイズム小論』
第十章「夢を叶える」から逃げたい
夢を諦めるときを教えて欲しいものです。
夢はいつ諦めればよいのか。
映画『8MILES』
第十一章「運命」から逃げたい
運命は、自分が引き寄せているものなのです。
運命というのは、我々の人生にこっそり忍び込んでくるのではない。
我々が開け放った扉を通って入ってくるのだ。
第十二章 人生からは逃げたくない
自分への嘘は致命的です。
肝心なのは、嘘を避けることです、いっさいの嘘を、特に自分自身に対する嘘をね。
自分の嘘を監視し、毎時毎分それを見つめるようになさい。
ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
感想!
まず感じたのは、「逃避は悪いことじゃないな」ということです。
紹介した他にも心にぐっとくる名言がたくさん掲載されているのでぜひ一度読んでみて人生の参考にしてみてください!